【红袖七队】ミス·パイロット②章 P28-46

yokotian (零妖妖) 巫师圣灵
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发表于:2015-09-09 20:49 [只看楼主] [划词开启]

2章 「何でもやります」面接から、シミュレーターの適性検査へ。晴、パイロットの夢を目指し始める

 

P28-32

 

あの面接でどうして?そう思ったのは晴だけではなかった。

「嘘でしょ?あの「何でもやります」女を?通した?マジっすか?ダメでしょ」

羽田空港内のレストランで、篠崎と向かい合って食事をしていた国木田も、思わずそう口に出していた。しかし篠崎はむしろ自信ありげな表情をしていた。俺の判断は間違っていないとばかりに微笑む篠崎に、国木田は思わずその整った顔を歪(ひずむ)ませんでしまった。

「本当だよ、面接して改めて思ったんだよ。嘘つきの操縦する飛行機には乗りたくねぇって。国木田君、俺は君の先輩パイロットで元教官だけど、君はそんな俺にお世辞の一つも言ってこない。嫌なことは嫌だって正直に言う。俺が考えたフライトプランでも、気に入らなかったら従ってくれない……あれって結構傷つくの」

「そりゃ無理はできないですよ…気にしてたんすか?」

「うん。でもそういう奴の方が信用できるよ。…他の学生が嘘をついているとは言わない。けど、彼女だけだよ、確実に本当のことを言ったのは。俺が乗客だったら、少しでも信頼できる奴に命を預けたいね」

「あれがそんなに大したタマでしたかね?」

「誰の話」

半ば呆れた(なかばあきれる)表情でそう言った国木田に、背後から声をかけたのは… 聞き覚えのあるその声に彼は驚いて振り返る。予想通り鈴木倫子が立っていた。

「「大したタマ」って聞こえたけど、女?」  

「……ごちそうさま。お先にね」

突然の倫子の登場にギョッとした国木田を放置して、篠崎は伝票を手に取り立ち上がった。けれど、一方は、倫子と二人きりにされて焦る国木田の様子を楽しんでいるところもあった。どちらにせよ、あとは二人でどうぞといった感じで、篠崎は席を離れた。

「ちょっと……篠崎さん」

国木田は思わず抗議の声をあげたが、篠崎はそれを無視し、そそくさと会計をすませ、レストランを出て行ってしまう。残された国木田に倫子が追った。

「で、どこの女の話?」 

「女って…学生だよ?訓練生試験に来たクソガキ」

「やっぱり気になってる。興味ある女のことは悪く言うもんね…孝之助は…」

「呼び捨てやめようか。付き合ってないんだし」

「え?付き合ってないの?あのときのささやきは何だったの?」 「やめろ」

倫子と国木田は確かに付き合っているわけではない、過去に付き合っていたわけでもない、けれど、その一歩手前の関係ではあるのでだ。

「あんなことささやいたら、普通は結婚するよね」 

「やめろ…… もうすぐフライトだから」

国木田は周囲を気にするようにそれだけ言って、倫子から逃げるように去って行った。

ANAのグランドスタッフの中でも指折りの美人と評判で、自分でもそうとう自信のある倫子だったが、国木田との間には、約束は一切なかった。長身でスタイルが良く、きりっとして、それでいてセクシー美人である倫子に追られれば、たいていの男性は落ちる。国木田ともあっさりとそういう関係になれるはずだった。しかし、二人の関係は一向に進まなかった。唯一の例外が、あの“ささやき”だ。本心では彼に好意を抱いていた。しかし、はっきりと伝えた事はない。態度や言動から国木田も好かれていることにはうっすら気がついているだろうけれど、はっきり「好きだ」と言ってしまっていたら、そういう関係にすらなれなかったような気がしたのだ。国木田は、大人同士、割り切った関係を望んでいる気がした。

だがら、さっきの話題が気になったのだ。国木田が気になっている訓練生候補の女性とは一体どんな人物なのかしらと。まあ、晴の方は、そんな倫子の思いはおろか、存在すら知る由(よし)もないのだけれど。

シミュレーターによる航空適性検査、そこで、まさにパイロットといった感じのきりっとした制服姿の国木田と、リクルートスーツ姿の晴は再び会った。「では、指示通りに操作してみてください」 シミュレーター内で、国木田が晴に指示をする。

「右側のレバーを上げて……」 うなずいて言われた通りに操作すると、シミュレーターは動き始めた。思わず、興奮した表情を浮かべながら、晴はさらに指示通りに操作を続けた。その晴に、同席していた篠崎が不意に話しかけた。住まいはどこかと尋ねられた晴は、動揺しながら浦田ですと答えた。さらに篠崎は、両親の年齢や簡単な計算など、操作に関係ない質問をしてきた。要は、マルチタスクの能力を見ているのである。パイロットには重要な項目だが、それを知らない晴は、突然の質問に動揺し、一瞬操作が乱れてしまった。けれど、国木田に「手元はそのままで」と言われると、パッとして、操作にグッと集中しなおした。もちろん、質問にも正確に答えながらだ。そんな晴の様子を、篠崎と国木田は真剣に観察していた。そして、国木田のさらなる指示通りの操作で、シミュレーターはゆるやかに上昇を始めた。

この浮き上がる感覚に晴は緊張と、そして、興奮を隠せなかった。自分の操作で浮き上がるという事実に、思わず息をするのも忘れてしまうほどだった。手元は動いているのに、呼吸を忘れ硬直(こうちょく)している晴に気がついた国木田がその肩をトンと叩いた。「息、吐いて」

その言葉で、晴は吸ったまま忘れていた息を、思いっきり吐きだした。次の瞬間、視界には一面の空が広がった。

「すごい」思わず目尻(めじり)に涙が浮かんだ。

そんな晴れの様子を篠崎と国木田は満足そうに見つめていた。それは、初めて、晴が心からパイロットになりたいと思った瞬間だった。その思いが届いたのか、数日後、晴の元にいは審査通過と次回審査の案内が書かれた通知書が届いた。自分がそこに残ったことにびっくりしながらも、すでに本気でパイロットにたりたいと思っていた晴は喜んで次回審査を受けに行った。

 

P33-37

 

「四人グループで一つの紙飛行機を作ってください。飛行距離を競ってもらいます。制限時間は十五分間。では始めてください」

篠崎の言葉に各グループが行動を開始する。大体どこも、話し合いから始めているようだった。篠崎と国木田を含む教官たちは、その様子を、メモを取りながら見ていた。晴は、自分以外の3人を見やった。簡単な自己紹介は済ませている。背の高い小鳥翔、関西弁の山田一男、メガネの諸星麻也(もろぼしまや)、晴以外は全員男性だった。

「各自、一つずつ折って一番飛んだのが代表。これでいいよな?」山田の言葉に小鳥と晴は素直に賛同の返事をしたが、諸星は、反応すらしないで、手を動かし始めていた。そんな諸星の態度に、山田は舌打ちしかねない表情をしている。「おい、返事くらいせぇや。一応チームやしさ、コミュニケーションはいるやろ?」

「仕切るね、そっちで点数稼ぐつもり?でも、結果が出ないと意味ないけどね」 ハンサムなのだけれど、どこかチャラチャラした雰囲気のある山田だが、コミュニケーションは必要だろうときっちりと諸星に話しかけた。しかし諸星は、メガネの下のクッキリとした濃い顔からは想像もできないほどに、冷淡に言い放った教官も観察している場で、それだけの発言ができるのは、ある意味、合格する絶対の自信があるということなのかもしれない。その反応に苛立ちつつも、結果ができないと…には納得だったのか、山田も紙飛行機を折り始める。そんな二人の様子を心配そうに見ていた小鳥も折り始めたので、それを見ていた晴は焦って折り始めようとした。けれど、「あれ?えっと…あれ?」 あー、でもない、こーでもないと、焦り始めた晴に気がついた山田と小鳥は驚いた表情だ。

「……え、お前、折られへんの?」

「…子供の頃に折ったはずなんだけど…ちょっと待ってね?」

そうは言ったが、焦れば焦るほど、基本の折り方すら出てこない。山田は呆れた表情で、晴にお前は折らなくてもいいよと言った。そう言われてさらに焦る晴を見かねたのだろう、小鳥が助け舟を出した。長身で見た目はデカい小鳥だけれど、中身は、その純朴そうで優しげな見た目どおり優しかった。小鳥は簡単にだけれど、晴に折り方を教え始めた。

「えっと、まず真ん中から折って」 「…ありがとう!」

山田はどこか呆れた表情でそんな二人を見ていたが、晴の不器用ぶりが気になってしまって、思わず途中から口に挟み始めた。「そこはもっと角度つけた方がええ… いや、逆や逆」

「その重心じゃ飛ばないで落ちるだけ。もっと抵抗を減らす工夫とかしないと」

「さらには、それでもまだどこか間違った折り方をしてしまう晴が気になってしまって、冷たくではあったが、諸星までも晴にアドバイスを始めたのだ。小鳥は優しく、山田は晴の不器用ぶりに少し笑ってしまいながらにぎやかに、諸星はあくまで冷たく、それでも3人は晴に紙飛行の折り方を教えてくれた。

そんな様子を見つつ、篠崎が手元の時計を確認して10分が経過したことを告げた。残り五分だと知った一同は慌てながら、晴に、後は自分でできるかと聞いた。その言葉に晴は、慌ててうなずいた。みんな、一斉に集中して自分の紙飛行を折り始める。ただ、うなずいたものの、実際には、晴はそこから先の折り方を思い出せなくて、晴の紙飛行機は完成しなかった。そして、その試験の帰り、晴は必死にある人物を追いかけていた。

「小田さん」 試験終了後、誰よりも早く会場を出ていった千里は、突然道端(みちばた)で名前を呼ばれ、驚いたが、その声に呼び止められることに慣れてしまったのか、足をとめて振り返った。

「小田さんと岸井君のグループ、紙飛行機、一番飛んでたよね!折り方教えてくれない?」

「は?今さら折っても意味ないから」

「分かってるけど……でも……」

「何?あなた悔しいの?でもね、グループワークで大事なのは勝ち負けだけじゃないの。リーダーシップとか、協調性とかを見るものだから」

「……だったらなおさらダメ。私、みんなに折り方教わっただけだし、しかも、私だけ完成しなくて……足引っ張って終わり……」ションボリ(垂头丧气,无精打采)した態度の晴に、千里はさすがに同情した風に、何やってるのよ…とつぶやきなけたが、ふと思い出したように口を開いた。 

「でも他にも受けてるんでしょ?パイロットにこだわることないじゃない」ダメなら他を探す、晴は確かに数ヵ月前にそう言った。けれど、今は違った。

「こだわっちゃうよ」 あっさりと、だけど、真剣な表情でそう返した晴を、千里は不思議そうに見返した。

「試験で飛んだでしょ。シミュレーターだっけ…でね、あのね、飛行機が浮いて、自分も浮いてるみたいになって、目の前から邪魔なもの全部消えて、あっという間に、空……またに雲……空の真正面(ましょうめん)!その時に見えたんだよ。モヤモヤ悩んでた就活のこととか、全部吹き飛んで、自分の将来がハッキリ見えた」

ポカンとしている千里を置き去りにして、晴は興奮した表情と口調で空を仰いだ(あおぐ)。偶然にも飛行機が飛んでいた。晴は、思わずそれを指差して喋り続けた。「あれ。ホラあれ!、ああなりたい。今度は本物で飛びたい。やっと小田さんの気持ち分かった。飛んだ瞬間、これしかないって思った。私もこれ一本だって。どんな仕事でもいいって思ってたけど、本当は自分が何になりたいのか分からなかった……。でも、今は」 上空を飛ぶ飛行機を恍惚(こうこつ)の表情で見つめながら晴ははっきりと言った 「私、パイロットになりたい」

けれど、そんな晴とは対照的に千里は、呆れを通り越して怒ったような表情を見せた。 

「簡単に言うな」口調も冷たい。「あのさぁ、手塚はそもそもパイロットを何だと思ってるの?」

「え?飛行機を操縦する人……」

尋ねられて晴はボカンとそう答えた。その回答に、今度は千里が一気にまくしたてた。

「その飛行機には乗客が乗ってるの。全く知らない誰かの命を何百って預るんだよ。今の私が偉そうに言えないけど、パイロットってそういう仕事。気持ちいいだけじゃないの。私は迷ったよ?本当は2年前に受けるつもりだった。でも、そのことを考えたら急に怖くなって、大学院に逃げて、受けるのが今になったの……。でも、今は覚悟できてる」

 

P38-42

 

千里の言葉に晴は何も言えなかった。そんな晴に千里はさらにたたみかける。

「手塚には覚悟あるの?パイロットは誰がなってもいい仕事じゃないと思う、私は 」 

覚悟はあるのか、その質問に答えはおろか、何の意見も言えないでいる晴を待つことはしないで、千里はじゃあねと立ち去って行った。

千里はいなくなっても、しばらくの間、晴はそこにたたずんでいた。確かに千里の言うことは真実で、どう返していいかわからなかったのだ。そんな晴の上空をまた飛行機が飛んで行ったけれど、それを興奮した表情で見つめることはもうできなかった。

千里とのその出来事から数日後、晴は最終面接を受けるために、宮田製作所を訪れた。驚くべきことに、宮田は最終面接をしないで、すぐに晴に採用を告げた。「こんな小さい会社だしね。今日、最終って言って、来てくれたら採用しちゃおうと思ってたんだよ。あ、でも、まだ他もうけてるんだろうから、返事は待つよ。いつでもいいから。あ、ちなみに、あれはどうなったの?パイロットは?」

「……三次まで行ったんですけど、ダメですね。紙飛行機を折るって課題で、私、折り方知らなくて、みんなに教えてるもらっただけで、みんなの足、引っ張っちゃいました」 

「……ウチは歓迎するから。いい返事待ってるよ」

宮田にそう言われて、晴は戸惑いつつも礼を言い、宮田製作所を後にした。だけど、あまり嬉しくなかった。あんなに欲しかった内定を手に入れたのに、だ。宮田は親切だし、勧めてみればよい職場だろうと思うのに、それでも、少しも嬉しくない。モヤモヤする自分に嫌気がさして、思わず部屋にあったANAのパンフレットをゴミ箱に捨ててしまった。どうせ受かってるわけがないと考えもした。紙飛行機も折れず、周りの足を引っ張っただけの自分。どうせ、不合格通知が来るだろうと言い聞かせた。覚悟することから逃げたかったのかもしれない。だけど、そんな慣れの元に届いた結果通知には、まさかの「最終面接の案内」の文字が躍っていたのだ。 「…嘘でしょ…」

「ヒバリ」の店内でそれを確認して呆然とする晴に、よし美がどうだったの?と心配そうに声をかけた。だけど、晴それには答えずに無言で自分の部屋へと上がって行ってしまった。そんな娘をよし美も開店準備をしていた茂雄も心配そうに見つめていた。晴が2階に上がって少しすると、上から例の機械音が一瞬だけ聞こえたが、すぐにやんだ。まるで、一度シュレッターにかけた紙片をすぐに取り出したような音だ。その日、店が始まっても、晴が手伝いに降りてくることはなく、晴が両親の前に再び姿を見せたのは、結局、その日の営業が終わってからだった。無言のままの娘に、よし美はついに声をかけた。「晴……どうするつもりなの?……通ってたんでしょ?パイロット」

「…もういいの。諦めた…あのね、知ってる?パイロットは誰にでも勤まる仕事じゃないんだよ…。何百人って人の命を預かるんだから…受け売りだけど」

ボソボソと言う晴れに、よし美はそう、と返すのが精一杯だったが、茂雄は違った。

「誰にでも勤まる仕事なんかねぇだろ。居酒屋だって、下手なもん出したら、二度と店に来てもらえなくなる。中毒なんか出しちまったら、命にまで関わってくるんだ」 普段は無口な茂雄が突然喋りだしたのに驚いたのか、よし美がとりなそうとしたが、妻の言葉を無視し、彼は晴に聞こえるようにはっきりと言った。「そこまで覚悟しなきゃ、どんな仕事も勤まられぇって話だよ」

晴はそれに何も言わず、そっと自室に戻ると、下端が多少ボロボロになってしまった通知書をじっと見つめたままで次の朝を迎えた。 朝を迎えて、晴が店に降りると、よし美から「カウンター」と言われた。見れば、カウンターには大巻きが乗った皿が置いてある。晴が、よし美に作ってくれと頼もうと思っていたのもだ。晴は昔から、悩むと大巻きを食べて考え考える変な癖がある。その癖を知っていて、頼まれるより先に作っておくあたり、さすが母親である。 晴はよし美に礼を言って、大巻きを食べ始めた。それを完食する頃には、スッキリとした表情をしていた。そして、リクルートスーツに着替えて、宮田製作所へと向かった。

「おはようございます…あの、返事、お待たせしてすみませんでした」

「いやいや急だね。でも、来てくれて嬉しいよ。さっそく、工場とか案内するから」

晴の突然の来訪に驚いた宮田だったが、すぐに笑顔でそう言った。しかし、晴は申し訳なさそうな表情で、勢いよく頭を下げた。

「ごめんなさい、せっかく採用して頂いたのに…でも、辞退させてください」

「…頭上げて。ちゃんと説明してくれるかい?」

「パイロットの試験がまだ残ってるんです。ダメだと思ってたら、最後面接まで通って」

「だったら待つよ。まだどうなるか分からないんだろ?」

「ダメなんです。…もう、夢になっちゃったんです、パイロット。夢なんてないはずだったのに…私、どうしてもなりたいんです、パイロットに。…だから、ごめんなさい」

一度は上げた頭を再び下げて謝る晴に、宮田は怒ることなく笑顔を見せた。 「…こりゃ、向こうに取られちまうな…試験中に、紙飛行機折るの教わったって言ってただろ、それも「才能」だよ。世の中には教わるのが下手な奴の方が多い。もし、俺がそっちの採用担当でも、「教わる才能」を持ってるやつは採用したいからな」

そんなことを言いながら、宮田は自分のポケットから取り出したバネを晴に手渡した。 「ウチで作ってる。飛行機の部品だ。…飛行機は300万の部品からできてるんだ。そのバネもそのうちの一つ。300万分の1だけれど、それがなきゃ飛行機は飛べない。パイロット一緒だ。いいバネは錆びねぇしへこたれねぇ。忘れんなよ……合格して、あのバネみたいに役立つパイロットになりな。…実は俺、飛行機乗ったことねぇんだわ」。飛行機の部品作ってるのになと笑った宮田に、晴は思わず私もなんですと笑い返した。

「パイロットになったら、そん時俺も乗せてくれ。な?」

「はい。その時はしっかり飛びます」

「よし。で、面接っていつなの?」

「今日の10時からです。」

「…今日?え?場所は?」

時計を見ながら、焦った表情で尋ねる宮田に、晴は羽田ですとのんびり答えた。

「羽田か…羽田? お前、ちょ… 急げ!間に合わなくなるぞ!」

「…え、あ…い、行ってきます!」

宮田の剣幕(けんまく)に(時計と場所を考えると彼の反応が正しいけれど)、晴は思わず全速力で宮田製作所を飛び出した。走る晴の背中に向けて、宮田はしっかり飛べよと見送ってくれた。背中に宮田の声を受けて走る晴の表情は、晴れ晴れとしたものだった。

 

P43-46

 

2010年4月1日、その朝、篠崎はANAのパイロット寮の食堂に来ていた。

篠崎も昔はここに住んでいた。変わらない寮の風景を懐かしがる篠崎に、寮母の三枝かのこがどうぞとお茶を持ってきてくれる。篠崎がそのお茶を飲んでいると、「 おはよーっす。今朝の味噌汁の具はなんですか…って、篠崎さん」

やはりパイロットの国木田が、そこにやって来たのだ。 「本当に来たよ…君はちょくちょくここで飯食ってるの?」

篠崎の存在に驚いていた国木田が、篠崎の方も本当に国木田が現れたことに驚いていうようだった。 それはそうだ、篠崎同様、国木田ももう寮を出ているのだから。「毎日ですよねー。「初心を忘れたくない」らしいですよ。」

かのこがのんびり言うと、国木田はキリッとした表情で、そうなんですとうなずいた。 「…本当は?」

が、すぐに篠崎につっこまれ、いつもの国木田に戻る。 

「楽なんです。美味しいし、家近いし」 その返答に苦笑する篠崎を気にするでもなく、国木田は食事を始めた。

その様子を無言で眺めていた篠崎だったが、食事が終了すると当時に立ち上がった。

「…さて、食べ終わったら、そろそろ出かけようか」

「は?」「国木田君、今日、何の日か知ってる?」 

首を傾けた国木田に、篠崎は満面の笑みを浮かべて答えた。 「入社式だよ」

その言葉通り、篠崎は国木田をANAの入社式の会場へと連れてきた。入社式は旅客部門、整備部門、全ての部門合同で行われており、二人が会場へ入ると、社長の挨拶等はすでに終わっていて、司会者が、自社養成パイロットのグループメンバーの発表を始めたところだった。 「まずは、グループAから…小田千里」

千里が起立して返事をする。それを確認してから、司会者はさらに次の名前を呼んだ。「岸井泰治」

呼ばれた岸井が立ち上がった瞬間だった。会場内の新人グランドスタッフの方から、「泰治!」と可愛らしい声が響いた。岸井はその声に驚きを隠せなかった。 「…え、すず?な、何で…」

岸井が夢を諦めないことを察した彼女は、岸井と共にいるため、同じ会社のグランドスタッフに就職していたのだ。今日まで、それを知らないかった岸井は驚愕(きょうがく)の表情を浮かべ、その様子に、事情が分からないなりに何か察したのだろう、会場内には笑い声が響いた。慌てふためく岸井とは対照的に、すずはニッコリと強い笑みを浮かべていた。清楚で儚げな見た目とはちがって、中身は行動的なのだ。響くその笑い声を 「ご静粛(せいしゅく)に」と制してから、司会者は発表を続行した。次いで、晴に紙飛行機の折り方を教えた小鳥翔、さらに諸星麻也と山田一男が呼ばれた。小鳥は緊張しているのか少しおどおどと立ち上がった。緊張した様子もなく淡々と立ち上がった諸星と、嬉しそうな笑顔で立ち上がった山田はお互いに同じグループであることを知ると、二人とも微妙な表情を見せた。採用試験の時点で、ウマが合わないと感じていたのだ。会場内のほかの人間はそれには気がついていなかったようだが、それに唯一気がついた小鳥は、心配そうな表情を浮かべた。その様子をまあ、あいつらはうかりそうだったかなという思いで見ている国木田だった。けれど、次の瞬間、「手塚晴」 司会者に名前を呼ばれ照れたように返事をしながら立ち上がった晴の姿に、国木田はひどく驚いた表情で篠崎を振り返った。

「え、あいつ…何で採ったんですか?」 「…観」

ニヤリと笑う篠崎に、「はあ?何考えてんすか!」とでも返そうとした国木田だったが、彼には、すぐにそれを超える驚きと衝撃が与えられた。 「グループAの教官は、国木田孝之助機長」。司会者が呼んだ自分の名前に思わず固まる国木田。晴たち6人は国木田の方を向いた。 篠崎はそんな様子に、ニヤリと笑ったままで、「頼んだよ、国木田君」とだけ言うと、まだ状況を把握できていない国木田を置いて、逃げるように会場を出て行ってしまったのだ。その篠崎を追おうとした国木田に向けた。「宜しくお願いいたします!」 と、6人が一斉に頭を下げた。国木田は唖然としたまま6人を見つめた。「…嘘だろ」 誰にも聞こえないように、思わずボツリとつぶやいた国木田だったが、もちろん嘘ではなく。 教官の国木田、そして、晴を含む訓練生6名のグループAが成立した瞬間だった。

 

先上文本,小伙伴们,快来读吧。纯手打,可能用错的地方,欢迎来捉虫!

@蚬木

@Vivianz55

@肥猫66

 

 

 

最后编辑于:2016-05-01 21:43

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分类: 朗读

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