2013.11.15(金) 司会者:银蛋
虫師
およそ遠しとされしもの、下等(かとう)で奇怪(きかい)、見慣れた動植物とまるで違うとおぼしき物たち、それら異名(いみょう)ないちぶんを人古くから恐れを含み、いつしか総じて、「虫」と呼んだ。
銀古:書簡(しょかん)読んでもらったかな。
森羅:じゃ、貴方が虫師(むしし)の銀古さん?お断りの手紙を書いていたんです。これまでもなんとかこう言った調査の申し入れはありましたが、すべて断ってきました。祖母の遺言なんです。僕のその性質を広めてはならない、そして、できる限り眠らせておくこと。ご覧になったように、昔から僕がものの形を象(かたど)ると、それは既存の生物でなくとも生命を持つんです。でも、新たな生物を乱すなど、人のしてよい所業(しょぎょう)ではない。八百万(やおよろず)の神々の怒りをうける、と言って、左手でものを描くことを祖母に禁じられました。右手で描くとなにもないんですけど、この間、指怪我しちゃいまして、それで先のようなことに。。
銀古:なるほど、あれは驚異(きょうい)の造形物(ぞうけいぶつ)だった。
森羅:僕も驚いた、あんなものまで動き出すとは今までも散々妙なもの、動きだしったりしたけど。
銀古:ええ、たとえば。。。
森羅:小森傘(こもりがさ)とか、孫の手とか、あっ、調査はお断りします。
銀古:チ。。
森羅:でも、そのまますぐ帰れとは言いませんが、こんな山奥まで入ってくるのは大変だったでしょう。今晩はゆっくりしててください。それに、実は人にあうのは久しぶりで世間話なら是非とも付き合ってほしいんですよ。
森羅:どうぞ、僕がつけた果実酒(かじつしゅ)です。普段はここで一人でやってるんだけど。
銀古:ええ。こんな人気(ひとげ)のないところに一人で住んでいるのか。
森羅:四年前に婆ちゃんが死んでからは、婆ちゃんがこの家を出ってはいけないと言ったから。