文学少女4:七章 暗い、暗い、土の中

发表于:2015-05-10 19:50 [只看楼主] [划词开启]
时间:2015-05-10 02:30~2015-05-31 02:30
地点: 南京
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知道了

七章 暗い、暗い、土の中

 

「なんでいるんですか。業者テストはどうしたんですか」

 うろたえるぼくに、遠子先輩はほんのり頬を染め、ぽそぽそ言い訳した。

「ごめんなさい。気になって……途中で、抜け出して来ちゃった」

 一瞬、目眩がした。受験生でE判定の分際で、なにをやってるんだ!

 遠子先輩が右手を開く。すると、青い花びらが、はらはらとこぼれ落ちた。

「この花びらを辿ってきたら、心葉くんたちがいたのよ」

 毬谷先生も、琴吹さんも、あっけにとられている。

 粧子さんが立ち上がり、遠子先輩を睨んだ。

「……っ! 誰なのっ、あなた?」

 遠子先輩が薄い胸をそらし、きっぱり答える。

「わたしは、ご覧のとおりの�文学少女�よ」

 その自己紹介は、粧子さんの理解の範疇を越えていたのだろう。目を丸くし、口を半開きにし、絶句してしまう。

 狭い部屋の中に、白々とした空気が流れた。

 立ちつくす粧子さんが、ようやく我に返り、顔をしかめ、喘ぐように声を絞り出す。

「あなた、今、ファントムが知っていると言ったわね。どういうこと? この子は誰なの?」

 ぼろぼろの衣装をまとった仮面の少年は、はだけた胸を隠すこともなく、しどけなく床にしゃがみ込んでいた。

 そうだ、彼は一体、何者なんだ。

 戸惑うぼくらに、遠子先輩が悠然と告げる。

「それを説明するのは、少しばかりやっかいだわ。水戸夕歌という女の子をめぐるこの物語は、様々な感情や思惑がからみあって、本筋が見えにくくなっているから。

 けれど、どうやら舞台には代わりの人が上がったようだから、彼が、あそこへ戻る必要はなくなったわ。時間はたっぷりあるので、わたしは文学少女らしく、この物語を読み解いてゆこうと思うわ」

 

 不思議な力が、ぼくらのいるこの空間を支配しているようだった。

 

 水のように澄んだ声で語りはじめる遠子先輩を、粧子さんが、毬谷先生が、琴吹さんが、息をのんで見つめる。

「この事件は、ガストン=ルルーの『オペラ座の怪人』を思わせる状況ではじまるわ。

 ルルーは一八六八年生まれのフランス人で、法律家や新聞記者として活躍したあと、三十代で作家に転身し、密室推理の名作といわれる『黄色い部屋の謎』などの作品を、次々発表していったの。同じ頃、フランスにはアルセーヌ・ルパンシリーズのモーリス=ルブランがいて、ルルーは彼と並び称される人気作家だったのよ。

 そんなルルーが、一九一〇年に発表したのが、オペラ座の地下にすむ仮面の男と、彼の暗い熱情に巻き込まれてゆく人々の姿を描いた『 Le Fantome de l'Opera 』——『オペラ座の怪人』よ。

 水戸さんはこの物語が好きで、�音楽の天使�に会いたいと、以前から話していたわ。

 そうして、ヒロインのクリスチーヌのように、さる人物に秘密のレッスンを受け、歌姫としての才能を開花させたのよ。

 一方で水戸さんには、クリスチーヌの恋人である、ラウル的な立場の男性もいたわ。

 聖条学園にいるというその人の名前や素性を、水戸さんは親友のななせちゃんにも明かさなかった。代わりに、彼に関わる三つのヒントを出したのよ」

 遠子先輩が、ゆっくり指を立ててゆく。

「一、彼は九人家族。

 二、彼はコーヒーが好き。

 三、考え事をするとき、テーブルの周りを歩き回る癖がある——。

 九人家族というのは、重大な決め手になるように思うわね?

 けど、このヒントは、実際に恋人のことを指していたわけではないのよ」

 前にも、そんなことを言っていた。水戸さんの彼氏は九人家族ではないと思うと——。

 聴き入るぼくらに、遠子先輩が一冊の本の題名をあげる。

「『愛の一家』という児童文学があるわ。古い本で、日本では絶版になっているので、最近の人は知らないかもしれないけれど。本が出版されたのは一九〇六年。作者はアグネス=ザッパー、ドイツの女流作家よ。五人の子供たちの母親だったザッパーは、その経験をもとに、父親と母親、それに七人の子供たちのあたたかな日常を綴った、ペフリング一家の物語を書いたのよ。

 ここに登場する父親は、少し短気だけど、朗らかで誠実な、愛すべき人物として描かれているわ。彼はコーヒーが大好きだけど、一家が貧しいので、祭日にしか飲まないの。また、考え事をするとき、テーブルの周りをせかせか歩き回るので、下宿人のご婦人に注意を受けているわ——」

 遠子先輩の声に、力がこもる。

「九人家族、コーヒーが好き、歩き回る癖——これは、すべて水戸さんが出したヒントと一致する。水戸さんは、外国の家庭小説をよく読んでいたそうなので、この本もきっと知っていたに違いないわ。では、水戸さんは、このヒントからなにを伝えようとしたのか? ペフリング一家の父親の職業は、音楽教師なのよ[#「音楽教師なのよ」に傍点]」

 聡明な瞳が、まっすぐに毬谷先生を見つめる。

「水戸さんが、彼氏の名前を秘密にしていたのは、彼が生徒ではなく教師だったからよ。いくら別の学校でも、教師と高校生の恋愛が噂になったら、彼に迷惑がかかると思ったんだわ。聖条学園に男性の音楽教師は、毬谷先生——あなたしかいません。つまり、あなたが水戸さんのラウルなんです」

 空気が、冷たく張りつめる。

 毬谷先生は、水戸さんの天使ではなく、恋人だったのだ!

 粧子さんは目を見開き、愕然としており、琴吹さんは真っ青な顔で震えている。

 毬谷先生が苛立たしげに目を光らせ、言った。その声にいつものやわらかさはなく、口調もぞんざいだった。

「確かに——きみの言うとおり、水戸夕歌とつきあっていた。けど最近は会っていないし、向こうも連絡してこない。他に好きな男でもできたんじゃないか? たとえば夕歌がレッスンを受けていた�天使�とか——。たまに会っても、夕歌は、そいつの話ばかりだった」

 黒々とした不安が、胸をじわじわと締め上げる。

 何故、先生はこんなに冷ややかな目で、恋人のことを語っているんだ。まるで憎むべきもの、唾棄すべきものを語るように。

 音楽準備室で、ぼくらに優しく笑いかけてくれた先生と、まるで別人じゃないか!

 遠子先輩が、問いかける。

「だから先生は、天使に嫉妬したんですか? ラウルが、クリスチーヌと音楽の天使の結びつきに不安を覚え、激しく身を焦がしたように……。

 水戸さんが、恋人から夜のバイトを辞めるように言われて悩んでいたことや、彼から頻繁に電話がかかってきたことは、ななせちゃんが証言しています。

 先生は、水戸さんが天使に惹かれてゆくのが、心配でたまらなかったんじゃないですか? 彼女が自分の前で、別の人のことを語るのが、許せなかったんじゃないですか?」

「いい加減にしてくれっ! 憶測でものを言うのはよしてもらおうか!」

 空気を裂くような鋭い叫びに、ぼくは、びくっと震えた。

 毬谷先生は、殺したそうな目で、遠子先輩を睨みつけていた。その視線を真っ向から受け止め、遠子先輩が、先生に負けないくらい強い声で言い返す。

「ええ、わたしはただの�文学少女�よ! 警察でも探偵でもないし、わたしが語ることは、全部�想像�にすぎないわ。けれど、水戸さんが失踪したあとの先生の行動は、不自然に思うんです。それほど執着していた恋人が、突然いなくなってしまったのに、何故、表立って彼女を捜すことをしないのか? 何故、ななせちゃんに資料の整理を頼んだのか? 何故、発表会のチケットをわざと見せたりしたのか?

 それに、一年生の女の子とホテルへ行ったことも、彼女を置いて先に帰ってしまったことも、なにかを捜すように、部屋の中を歩き回っていたことも、テーブルをじっと睨みつけていたことも——」

 杉野さんのことを、遠子先輩が口にしたとたん、先生の顔に衝撃が走るのを、ぼくは見た。

 遠子先輩が、執拗に問いかける。

「先生は何故[#「先生は何故」に傍点]、そんなに[#「そんなに」に傍点]、テーブルをじっと見ていたんですか[#「テーブルをじっと見ていたんですか」に傍点]? それを見ながら[#「それを見ながら」に傍点]、なにを思い出していたんですか[#「なにを思い出していたんですか」に傍点]?」

 まさかという思いに、体の芯が震え出す。

 暗い闇が、背中から、ひたひたと迫ってくる。

「ねぇ、先生は、どうしても部屋へ行って、確かめなければならないことが、あったんじゃないですか? 失踪した日、水戸さんは急なバイトが入って出かけなければならないと、ななせちゃんにメールを送ったそうです。そのバイトは、お金をもらって男の人とおつきあいをすること——援助交際でした。

 先生は、水戸さんの浮気を疑って監視するうちに、水戸さんの秘密を知ってしまったんじゃないですか? そして、あの日ホテルで、お客さんとして水戸さんに会い、水戸さんのラウルであったあなたは[#「水戸さんのラウルであったあなたは」に傍点]、嫉妬と怒りからファントムに変貌し[#「嫉妬と怒りからファントムに変貌し」に傍点]、水戸さんの頭をテーブルに叩きつけた[#「水戸さんの頭をテーブルに叩きつけた」に傍点]」

 

「違うっ!」

 

 毬谷先生の声が、遠子先輩の言葉を断ち切る。先生の顔はゆがみ、手足はぶるぶると震え、血走った目の中で、混乱と激情がめまぐるしく交錯していた。

 闇が——闇が、空気の色を変えてゆく。

「あれは、夕歌が勝手に倒れたんだっ! 私が歌をやめるように言っても、夕歌はきかなかった。あんな卑しい真似までして、どうして音楽なんか続ける必要がある!

 なのに夕歌は泣きながら、もう自分には歌しかないと答えたんだ。天使が待っているからレッスンに行かなければと言って、私に背中を向けて、部屋から出て行こうとしたんだ!」

 ぼくは愕然としていた。

 先生は自分がなにを叫んだのか、気づいていないようだった。理性のタガがはずれたように、わめき続ける。

「私はカッとし、夕歌の首を絞めた。そうやってもみあっているうちに、夕歌が足を滑らせて、テーブルの端で頭を打ってしまったんだ。夕歌は血を流し、床に倒れたまま、動かなくなった。私は驚いて、夕歌を残してホテルを飛び出したんだ」

 ガシャンという音がして、粧子さんの手からハサミが落ちた。粧子さんは叫びをこらえるように、両手を口にあてている。

 琴吹さんも真っ青な顔で、棚の端にしがみついている。

 ぼくも信じられなかったし、信じたくなかった。毬谷先生が、水戸さんに、そんなことをしたなんて!

 混乱するぼくらの目の前で、毬谷先生は変貌を続ける。仮面の下から嫉妬と狂気に醜くゆがんだ素顔が現れ、甘く軽やかだった声は、ひきがえるのように聞き苦しく割れた。

「翌日になっても、ホテルで死体が見つかったというニュースは、流れなかった。夕歌の携帯に電話してもつながらないので、家族のふりをして学校に問い合わせてみると、授業を無断欠席していて、寮にも帰ってないという。私は、おかしくなりそうだった。夕歌は、どこへ行ってしまったんだ? 生きているのか? 死んでいるのか?」

 そんなとき、�椿�の名前で、発表会のチケットが送られてきたのだ——。

 そのときの先生の驚きが、ひび割れた声から、痛いほどに伝わってくる。

 先生が琴吹さんを、資料の整理をする名目でそばに置いたのは、琴吹さんが水戸さんの親友と知っていて、水戸さんから連絡があるのではないかと疑い、監視するためだった。発表会のチケットを見せたのも、琴吹さんがどう反応するか試したのだ。

 おだやかな表情の裏側で、先生は、焦り、もがき、苦悩しながら、ほくらの言動を細かく観察していたのだ。

 毬谷先生は、ラウルであり、ファントムだった!

 乱れ、震える声で、先生が言葉を続ける。

「携帯やパソコンに、椿の名前で、�人殺し��堕天使�と何通もメールが届いた。なのに、本人は私の前に現れない。じわじわとなぶられている気分だった。きっと、天使が夕歌を操っているんだ。天使が、夕歌をあの場所から連れ去ったんだ。

 そうだ、全部——全部、天使が悪いんだ!

 夕歌が天使に惹かれたりしなければ——私を裏切ったりしなければ——。

 私は夕歌を、天使から助けたかったんだ! なのに、間に合わなかった[#「間に合わなかった」に傍点]。夕歌は、天使に、地下の王国に引きずり込まれてしまったんだ!」

 瞳孔を開いたまま叫ぶ姿に、胸が裂けそうになる。

 きっと、毬谷先生は、水戸さんを傷つけるつもりなんてなかったんだ。

 先生が憎んでいたのは、水戸さんではなく、水戸さんの心を奪った天使だった。

 水戸さんの両親が心中したことも、先生は知らなかったのだろう。借金のことすら聞いていなかったのかもしれない。

 だから、先生には、水戸さんの気持ちがわからなかった。

 援助交際をしてまで、音楽を続けようとする水戸さんが理解できず、水戸さんが変わってしまったことを、天使のせいにし、天使を憎んだのだ。

 杉野さんとホテルへ行ったのも、水戸さんを置き去りにしたことを後梅して、ただ水戸さんの生死を確認したかっただけなんじゃないか。

 先生は先生なりに、水戸さんを救おうとしていたんじゃないか。だから、テーブルを睨みつけ、険しい声でつぶやいたのだ。

 間に合わなかったと[#「間に合わなかったと」に傍点]——。

 そうだ、先生は悪い人じゃないし、堕天使なんかじゃない。先生は——先生は——。

 そのとき、冷ややかな声が響いた。

 

「裏切ったのは[#「裏切ったのは」に傍点]、あたしではなくあなたでしょう[#「あたしではなくあなたでしょう」に傍点]? 敬一さん[#「敬一さん」に傍点]」

 

 高く澄んだ、少女の声。

 千切れた衣装を身にまとい、壁際に立ち、氷のように美しい声を紡いでいたのは、仮面の少年だった。

「夕歌……っ」

 琴吹さんが、顔をこわばらせてつぶやく。粧子さんも、化け物でも見る目で、彼の口元を見つめている。

 遠子先輩は唇をぎゅっと結び、険しい顔で立ちつくし、ぼくは、頬を冷たい手で撫でられたような気がした。

 その声は、前に携帯で聞いた水戸さんの声と、そっくりだった。

 変声期を過ぎた少年のものではありえない、高く澄んだ、少女の声——。

「!」

 毬谷先生が、声にならない恐怖の叫びを発するように、顔を大きくゆがめる。

 殺戮の姫トゥーランドットの中に、祖先の姫がよみがえったように、この瞬間、水戸さんの魂が彼に乗り移り、水戸さんの声で、毬谷先生に語りかけているようだった。

 

「あなたが[#「あなたが」に傍点]、あたしを殺したのよ[#「あたしを殺したのよ」に傍点]、あたしの体は[#「あたしの体は」に傍点]、冷たい土の下で腐りかけているわ[#「冷たい土の下で腐りかけているわ」に傍点]」

 

 全身を、冷たい戦慄が駆け抜けてゆく。

 一体、なにが起こっているんだ。これは現実なのか?

「嘘だっ!」

 毬谷先生が、汗をだらだらこぼしながらわめく。

「死体は、ホテルにはなかった! 夕歌は死んでなんかいない。生きて、天使のところにいるんだ!」

 少女の声が、尖った氷柱のように、冷たく響く。

「敬一さん、あなたは、いつもそうね。そうやって自分を正当化して、綺麗なままでいようとするのね。あのときも[#「あのときも」に傍点]、あなたはあたしを穢れた女と責めて、殺そうとした」

「違う……っ」

「違わないわ」声が、冷然と告げる。「あたしの首を絞めるあなたの目は、誇りを傷つけられた殺意と憎しみで、刃物みたいに光っていた。そう、ちょうど今のあなたのように」

「!」

「倒れて動かなくなったあたしを置いて、あなたが逃げ出したあと、目を覚ましたあたしが、床にこぼれた血を、どんな気持ちで拭き取ったか……自分の保身ばかり考えているあなたには、到底わからないでしょうね。

 あたしがどんな気持ちで、ひっそりホテルから出ていったかも。

 冷たい風に吹かれながら、夜道を歩いていったのかも……。

 次の朝、眠ったまま息を引き取ったあたしが、なにを思いながら逝ったのかも……。

 あたしの[#「あたしの」に傍点]死因は、頭部の打撲だったわ。

 これでもあなたは、あたしを殺してないと言い張るの?」

 毬谷先生が唇をわななかせ、喉の奥からくぐもった声を絞り出す。けれど、それは言葉にはならなかった。

 琴吹さんは、親友の声で、その死を語る少年を、恐怖と混乱の眼差しで見つめている。

 彼が言ったことは、本当なのか?

 水戸さんは、毬谷先生とホテルで会った翌朝、息を引き取ったのか?

 喉が震え、頭の芯が痺れるように熱くなる。

 もし、そうなら、琴吹さんはどうなるんだ? 水戸さんがクリスマスに帰ってくるのを信じて、待っていたのに!

 仮面の少年が、細い手をゆっくりと持ち上げ、毬谷先生を指し示す。

 男たちの罪を許さないと歌うトゥーランドットのように、高く澄んだ声で、冷酷に言い放つ。

「あなたは傲慢なルシファーよ。あなたの罪は、あたしを殺したことだけじゃない。

 敬一さん、あなたは[#「あなたは」に傍点]、あたしに[#「あたしに」に傍点]、間違った歌い方を教えて[#「間違った歌い方を教えて」に傍点]、喉を潰そうとしたわね[#「喉を潰そうとしたわね」に傍点]?」

 毬谷先生の顔に、これまでで一番強い衝撃が走った。

 ぼくらも、驚いて息をのむ。

 先生が、水戸さんの喉を潰そうとしただって! そんな、そんなことって——。

「違うっ。私は——」

 怯えきった目をして後ずさる先生を、白い仮面の向こうから、ナイフのような鋭い視線が貫く。抑えされない憤りを感じさせる声が、容赦なく先生を責め立て、糾弾する。

「あなたは、天使とあたしの仲に嫉妬しただけじゃない! あたしの才能にも嫉妬していたっ[#「あたしの才能にも嫉妬していたっ」に傍点]! それを開花させた天使とあたしが憎らしくてたまらなくて、殺してしまったのよ!」

 先生が、顔を振り上げる。

「そんなんじゃない! 私は、夕歌が歌にのめり込んでゆくのが嫌だったんだ。

 夕歌は確かにいい声を持っていた。けれど、そんな人間、あの世界に掃いて捨てるほどいるし、運良く成功したとしても、どうせ一時のものにすぎない。すぐにまた失って、胸を切り裂かれそうな絶望を味わうことになるに決まっている。私もそうだった!」

 血を吐くような絶叫。

 震えながら語る先生の表情も、激しい痛みと苦悩にあふれていた。

「子供の頃、天使と呼ばれ、天才だとちやほやされてきた。なのに変声期がきて、大人の声に変わったとたん、技巧は優れているが、なにかが足りない、子供の頃のきらめきがなくなったなんて、勝手なことを言われた。

 それでも私は、血の滲むような努力をしてきたんだっ! いつか、失われた声以上に素晴らしい声を得ることができると信じて——。

 そんなとき、留学先のパリで、本物の天使の歌を聴いてしまった」

 どういうことだ? 先生以外にも、天使と呼ばれていた歌手がいたのか? それに本物の[#「本物の」に傍点]天使って?

 先生が、大きく顔をゆがめる。

「あの声……っ。変声期を迎えた男性には、絶対に出せない、光の玉を自在に転がすような清らかな声——。私が失った高く澄んだ声——。

 あの声を——歌を、聴いたとたん、気づいてしまった。私が欲しかったのは、失われたソプラノだと。テノールなんて、私にとっては、紛い物にすぎないのだと」

 粧子さんが、悲鳴のような声で叫んだ。

「そんなっ! あなたのテノールは、甘くて透明で素晴らしかったわ! コンクールにも入賞したし、プロでだって活躍できたわ。みんなが、あなたをうらやんでいたのよ!」

 体を売りながら学費を稼ぎ、それでも歌手として成功することは叶わず、教え子を堕落させることで復讐してきた粧子さんにとって、毬谷先生の話は、取り乱さずにいられないほど、衝撃だったのだろう。

 きっと粧子さんにとっては、毬谷先生こそが、自分が手の届かない高見に楽々と立つ、才能の象徴だったのだ。

「あんなつまらないテノールなんて、いくらでも捨ててやる。なんの価値もない! コンクールだって、せいぜい入賞止まりだ! もし、私に、昔のままのソプラノがあれば! あの頃のように歌えたら、いや——」

 毬谷先生が苦しそうに眉根をぎゅっと寄せ、声を絞り出す。

「たとえ……私が少年でも[#「私が少年でも」に傍点]、あんな風には[#「あんな風には」に傍点]——歌えなかった[#「歌えなかった」に傍点]。紛い物なのは、私のテノールではなく、私自身だ。あの声を前にしたら、私は偽物の天使にすぎず、成人になった今では、二度とあの声を越えることもできない。これ以上ない、完璧な敗北だ。

 それがわかったとき、断崖から突き落とされた気持ちだった。

 なのに、あの美しい声を求めずにいられない! コンサートに通いつめて、幾度もあの声を聴き、そのたび絶望した。もう、許してほしかった。この世で一番憎んでいるものを、この世で最も愛さずにいられないという永劫の苦しみから、解放して欲しかった。

 そんなとき——天使のコンサートで、老いた音楽家が、手首を切って亡くなったのだ」

 その音楽家が、何故、その場所で死を選んだのか。

 彼もまた、真の才能を目の当たりにし、絶望したのか。それとも、最後の瞬間に、美しいものに包まれたいと願ったのか。それは今もわかっていない。

 けれど、その事件がきっかけになり、CDで天使の賛美歌を聴きながら、自殺をする人間が続出した。天使のコンサートは中止になり、CDも販売を自粛した。

 そうして、天使は人々の前から姿を消してしまったのだと、先生は震えながら語った。

 そんな先生を、ぼくは胸を抉られるような痛みとともに、見つめていた。

 

『芸術家を目指す人たちはね……みんなとても臆病で、自信がなくて、揺れやすいんですよ』

 

『才能があると褒めそやされながら、壁にぶち当たって、苦しんで、苦しんで、どうしようもなくなって……それでも諦められなくて、心を病んでゆく人たちを、大勢見てきました』

 

 あれは、先生自身のことだったのか——!

 

 毬谷先生が、腕の時計を、ぶるぶると震えながらはずす。そこには、刃物で切った痕があった。

 先生もまた、天使の賛美歌を聴きながら、自殺を試みたのだ。けれど死にきれず、それまでの生活をすべて捨て、誰にも告げず、旅に出たのだ。

「……っ、天使のことを、忘れたかったんですよ。なのに、パリからどれだけ遠く離れても、あの、きらめくような歌声が、耳の奥で鳴り響いて、離れませんでした。あの声がどこまでも追ってくる。はじめてあの歌を聴いたときから、きっと呪われていたんです。あれは、天使ではない。人を破滅に導くファントムの歌声です。日本へ戻ってきて、やっと——やっと、あの歌が聞こえなくなったと思ったのに——」

 頭を抱え、うなだれ、弱々しい声で、先生がつぶやく。

「つきあいはじめたとき、夕歌は朗らかで優しい、平凡な少女だったんです。オペラ歌手を目指していたけれど、伸び悩んでいて、いつも迷いながら歌っていました。そんな、私と同じ、天才でもなんでもない、ただの人間の夕歌こそが、愛しかったんです。

 なのに夕歌は天使に会って、変わってしまいました。私の言葉より、天使の言葉を信じ、歌い方を変えた。

 あの歌を聴いたとき、ぞっとして、吐き気がしました。

 夕歌の歌い方は、天使の歌にそっくりだった。

 どうして! 私がなにをしたというんです? 何故、天使は私を追いかけてくるんです? 私から、大事なものを奪ってゆくんですか? 私は夕歌を、天使から引き離そうとした。けれど、間に合わなかった[#「間に合わなかった」に傍点]——」

 突然、�水戸さん�が、興奮した声で叫び出した。

「そんなの、ただの言い訳よっっっ! あなたがあたしの首を絞めて、一人で逃げ出した事実は変わらないわ! あなたが[#「あなたが」に傍点]、あたしを殺した[#「あたしを殺した」に傍点]! あなたがあたしを殺した[#「あなたがあたしを殺した」に傍点]! あなたが[#「あなたが」に傍点]、あたしを殺したっっっ[#「あたしを殺したっっっ」に傍点]!!!!」

 先生が耳をふさぎ頭を振る。凍えるような声が、永遠に続く呪いの言葉を繰り返す。

 あなたが、殺した、

 あなたが、殺した、

 あなたが、殺した、

 まるで、美羽がこの場に現れ、ぼくに指を突きつけ責めているように、このときぼくは錯覚した。

 あなたが、あたしを殺したのよ、コノハ!

 胸に激痛が走る。どす黒い渦に飲み込まれ、押し潰されそうな恐怖に、ぼくはたまらず叫んだ。

「やめてくれっ! 毬谷先生は、水戸さんを殺すつもりなんてなかった。水戸さんと、おだやかに、暮らしたいだけだったんだ。先生は、本当の悪人じゃない。ぼくらと同じ、弱くて平凡な人間だ——」

 どうか、先生を許してほしい。

 これ以上、先生を追いつめ、責めないでほしい。

 哀願のようなその言葉は、先生への弁護ではなく、ぼく自身への弁解だった。

 ぼくだって、美羽を傷つけようなんて、かけらも思っていなかった。美羽の嫌がることなんて、なにひとつしたくなかった。

 あんな冷たい目で、美羽に睨まれ、無視され、「コノハにはわからない」と、突き放されるような——そんな生きたまま手足をもぎとられるに等しい罰を受けるような大罪を、犯したくて犯したわけじゃない!

 自分の弱さや狡さに、目の前が真っ暗になるような絶望を覚えながらも、ほくは自分の心を保つのに精一杯だった。

 琴吹さんが隣にいるのに!

 ずっと青ざめ、震えていたのに!

 親友を手にかけた相手を、醜い自己弁護のために庇うなんて! ぼくは最低だ、最低だっ。

 そのとき、毬谷先生が低い声で唸った。

 

「勝手なことを言うな。きみに、なにがわかるんだっ」

 

 頬を打たれたように、ぼくは押し黙った。

 毬谷先生は屈辱に頬を染め、憎しみに燃える目でぼくを睨んでいた。

「私は、平凡でおだやかな生活なんて、これっぽっちも望んでいなかった。平和な日常に勝るものはないなんて、凡人の負け惜しみだ。……っ、それでも、そう思い込むしかなかった。その悔しさが、惨めさが、きみのような気楽な高校生に、わかるものかっ!」

 

 ぼくと、琴吹さんと、先生と——三人で過ごした、あたたかな日常が——。

 

 おだやかな空間が——。

 

 大切だった時間が、記憶が、音を立てて崩壊してゆく。

 

 シナモンの香りのするやわらかな湯気の向こうで、満足そうに目を細めて笑う先生。

 とろりとしたチャイのように、甘い言葉。

 

『好きな人と一緒にゆっくり過ごす時間を、なによりも大切にしたかったんですよ』

 

『自分の選択を後悔はしていませんし、断言します。一杯のチャイがあれば、人生は素晴らしいし、平凡な日常は何物にも勝ると』

 

 心の中が空っぽになり、体から力が抜け落ちてゆく。

 ぼくにくれた、あの言葉は、全部嘘だったのか? 先生の口から吐き出される醜い言葉、それが先生の真実なのか?

 なににもとらわれない自由さや。やわらかな微笑みに、憧れていたのに……。

「私は金持ちで善良な、脇役のラウルになんかなりたくなかった! たとえ化け物と罵られても、才能あふれるファントムになりたかった! 人を傷つけ、殺すことでファントムになれるなら、いくらでもそうしただろう! なのに、夕歌を殺しても、私はファントムの仮面を被ったラウルのままだ!」

 これが[#「これが」に傍点]、真実[#「真実」に傍点]?

 これが[#「これが」に傍点]、本当のこと[#「本当のこと」に傍点]?

 なんて痛い。なんて醜い。なんて自分勝手な——!

 愛も信頼も、なんて脆い——!

 遠子先輩が、哀しげな瞳で訴える。

「ラウルは脇役ではないわ。誠実にクリスチーヌを想い続け、彼女を救い出した、物語の主人公よ。『オペラ座の怪人』は、ラウルがいなければ成り立たない。ラウルという光があって、はじめてファントムという闇が際立つのよ」

「そんなの詭弁だ……! 一体、誰が、あの育ちがいいだけの、間抜けなラウルのことを気にするのか。ラウルなんて、見た目ばかりが綺麗な、張りぼての凡人だ。真の天才の前では、誰も振り向きもしない、憐れな紛い物だ!」

 絶望と狂気が、先生の全身から吐き出される。目が獣のように光り、激しく吠え、唸り、身悶え、また咆哮する。

「わからないっ。私の気持ちは、わからないっ! 誰にもわからないっっっ!」

 

『コノハには、きっと、わからないだろうね』

 

 さっきまでぼくを責めていた美羽の幻影は、毬谷先生の上に重なり、棘だらけの言葉を吐き散らしていた。

「きみたちには、なにひとつわからないっ! 夕歌があんな風に歌わなければ——あの歌声を思い出させなければ、私は私を騙しながら生きられたかもしれないのに。

 天使が、ファントムが壊した! すべてを奪った! 私はファントムを憎む! ファントムを許さないっ!」

 もう誰の声も、先生には聞こえない。

�文学少女�の言葉も、届かない。

 仮面の少年に指を突きつけ、先生が絶叫する。

「おまえも[#「おまえも」に傍点]、おまえに心を許した夕歌も、死んでしまえ! おまえたちこそ、呪われろ!」

 恨みの言葉が、世界を闇に染める。

 黒い渦巻きのような絶望が、ぼくの心をかき乱し、頭をガンガンと叩く。

 そうだ。ぼくにはわからない。先生の気持ちも、美羽の気持ちも、ぼくにはわからない! わからない! わからない!

 先生がくれたあの言葉は、特別な言葉だったのに。先生みたいになりたかったのに。

 やっぱり、本当のことなんて知らないほうが良かったんじゃないか!

 仮面の少年が、破けた衣装の裾を、するりと持ち上げ、足に巻いたベルトに差したナイフを、慣れきった手つきで引き抜くのを、ぼくは絵空事のように見つめていた。

 誰でもいい。この絶望に満ちた物語を、一刻も早く終わらせてくれるなら……。

 そのとき、琴吹さんがぼくの隣をすり抜け、毬谷先生のほうへ歩み寄った。

 琴吹さんは、床に落とした青い薔薇の花束を、腕にしっかり抱えていた。

 眉をきゅっと吊り上げ、唇を噛みしめ、怒りの表情で花束を振り上げ、それで毬谷先生の顔を、思いきり殴った。

「——!」

 

 海のように真っ青な花びらが、はらはらとこぼれ、花束が音を立てて、床に落ちる。

 その下から、頬に花びらをつけた、目を見開いた、茫然とした、毬谷先生の顔が現れた。

 琴吹さんは両手を握りしめ、足を踏ん張り、震えている。

 目の縁にいっぱい涙をためて、先生を睨みつけたが、その顔がたちまち崩れ、哀しみが、涙と一緒にあふれ出した。

「!」

 先生の顔に、驚きが浮かんだ。

「ゆ、夕歌は、先生のことが、とっても……好きだったんだよ。この薔薇も、先生が誕生日に選んでくれた花だから……好きになったって、言ってた。わざわざ写真を撮って、あたしのとこに、メールで送ってきたんだよ。彼がくれた薔薇なのって……。何枚も何枚も……。先生は、夕歌のこと、好きじゃなかったのっ!?」

 それは憎しみでも、怒りでも、呪詛でもない、親友を想う純粋な叫びだった。

 青い薔薇が、幸せだった頃の記憶を、先生に思い起こさせたのだろうか……。

 水戸さんに感じていた気持ちは憎しみだけではなく、その前に、確かに愛があったのだと。

 先生の顔に、哀しみがゆっくりと浮かび上がってゆく。

 狂気のままに、ラウルたちを殺そうとしたファントムは、クリスチーヌが自分のために涙を流してくれるのを見た瞬間、生まれてはじめて癒され、満たされた。

 無私の愛情に支えられた歌姫の涙は、冷たい仮面の下にまで流れ込み、ファントムの目の中で、彼の涙と混じりあい、恐ろしい怪物だった彼の魂を震わせた。

 

 ——可哀そうで不幸なエリック。

 

 ファントムと名乗るしかなかった一人の憐れな男を、歌姫の言葉が救ったのだ。

 それと同じように、琴吹さんの涙は、先生の中のやわらかな部分に、ふれたのかもしれない。

 毬谷先生が、ゆっくりと床にくずおれる。

 チリン……という音がし、床に銀色の指輪が転がった。

 先生がハッとし、指輪を凝視する。

 仮面の少年が、感情を無理矢理押し殺したような低い声で、淡々とつぶやいた。

「……夕歌は最後まで、それを握りしめて、はなさなかった……」

 指先を震わせて、先生が指輪を拾う。

 それから、スーツのポケットから、もうひとつ——同じデザインの指輪を取り出した。

 イブに、おそろいの指輪を交換したのだと、水戸さんは、嬉しそうにメールに綴っていた。

 いつも身につけていようと約束したのだけど、彼は学校でつけているとからかわれるから、指からはずして隠していたのだと。

 デートの前になると、急いで引っ張り出して、指にはめるのだと。

 それを遠くからこっそり見ているのが、とても好きだと。

 

『それからね、哀しいことがあって、彼が手をぎゅっと握りしめて耐えているとき』

 

『その手にふれて、そっとほどいてあげるときね……。とても優しい、崇高な気持ちになって、ああ、彼のこと、愛してるなぁって思うの』

 

 手のひらに乗せた二つの指輪を、先生が泣き出しそうな弱々しい眼差しで見つめる。

 そうして、両手で強く握りしめた。

 うつむき嗚咽する先生の手を、優しくほどいてくれる人は、もういない。

 自分がなにを失ったのか、先生はようやく気づいたのだ。

 神の祝福の意味を持つ、青い薔薇の花びらが、先生の周りに散らばっている。

 先生がしたことは、許されることじゃない。

 先生が口にした言葉も、取り消せない。

 けれど、肩を震わせ、涙をこぼし続ける先生を見ていて、胸にあった暗い塊が、静かに溶けてゆくような気がした。

 遠子先輩も、粧子さんも、哀しそうな顔をしている。

 琴吹さんは手の甲で涙をぬぐいながら、子犬のようにすんすんとしゃくりあげている。

 ぼくは、まだ自分にその資格があるのか迷いながら、胸が張り裂けそうになりながら——それでも、手をのばして琴吹さんを抱きしめた。

 

 天使は、いつの間にか消えていた。

 

[#中央揃え]◇    ◇    ◇

 

[#ここから太字]

 たくさん泣かせてしまって、ゴメンね、ななせ。

 それに、クリスマスの約束を守れそうにないことも……

 きっとこれが、ななせに送る最後のメールになると思う。

 ななせは、あたしに助けられてばかりだったって言ってたけど、そんなことないよ。

 あたしのほうこそ、いつもななせに元気をもらってたんだよ。

 ななせは、昔から不器用でまっすぐで、嘘がつけない子だったね。男子に文句を言いに行く役を、よくクラスの女子に押しつけられて、貧乏くじばかりひいてたけど、そんなななせが、あたしはとても好きだったよ。

 あの頃、ななせは、男子なんて嫌いだし、男子もあたしのことが嫌いだって言ってたけど、あたしはいつか、ななせの素敵なところをわかってくれる男の子が現れるって、確信してたんだよ。

 だから、中二の冬に、ななせがもじもじしながらやって来て、真っ赤な顔で、「眉のそろえ方、教えて」って言ったときは、自分のことみたいに嬉しかった。

 ななせが、好きな人のために女の子らしくなりたいと思ったことや、ななせが綺麗になる手助けをできることがね。

 ななせはいつも、一生懸命、恋をしていたね。井上くんのことで、喜んだり、哀しんだり、うろたえたり、反省したりするななせを応援するのは、本当に楽しかったよ。

 なんて可愛いんだろうって、いつも思ってた。ななせは可愛い。本当に可愛い、世界で一番可愛いって。

 ななせの気持ちが、早く井上くんに伝わればいいって、ずっと願ってたんだよ。

 あたしの彼氏とななせと井上くんの四人で、Wデートができたらいいねって、よく話してたね。そうするとななせは、照れてしまって可愛かった。四人のデートが実現できなかったのは残念だけど、ななせの恋はきっと叶うって、あたしはこれからも信じているし、祈っているよ。

 夕歌を帰してあげられなくて、ゴメンね。けれど、今、夕歌は、おだやかで幸せな気持ちで、大好きな歌をいっぱいうたっているから、心配しないで。

 ななせのこと、この先もずっと親友だと思っている。

 ななせの幸せを、心から願っているよ。

 もし、ななせに哀しいことがあったときは、あたしからななせに送った魔法の呪文を思い出してね。

 

 ななせは可愛い。本当に可愛い。世界でいっっっちばん可愛い。

[#ここまで太字]

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