「いらっしゃいませ」
“欢迎光临”。
彼が舎館の古びた石造りの門をくぐると、門の脇で塵《ちり》を拾っていた子供が、澄んだ声を上げ、あわてたように駆け寄ってきた。彼はその子供の顔を見て、大きく破顔する。
他走过古旧的石造院门,正在门口扫地的孩子,正高声招呼,然后慌慌张张跑过来。他看到那个孩子,咧嘴一笑。
「へえ、おまえ、小明《しょうめい》か」
“诶,你是小明吧”。
だけど、と不審《ふしん》そうに言った子供に、彼は屈《かが》みこんだ。
对孩子说了一句不清不楚的话,他蹲了下来。
「頑丘《がんきゅう》だ。覚えていないか? ずいぶん遊んでやったろう」
”我是顽丘啊。你不记得了吗?以前一直和你玩啊?“
「頑丘おじさん?」
”顽丘叔叔“。
「そうだ。思い出したか?」
"正是。你终于想起来了"
「ずいぶんいっぱい久しぶりだねえ」
“真的是过了太长时间了”。
少年はくしゃりと笑った。頑丘はその子供の額《ひたい》を親しみを込めてつつく。
少年终于笑了。顽丘用抚摸小孩的额头。
前に見たのは二年前だったか、当時で十歳、父親の家業を手伝ってあちこちの雑用をしていたが、まだ客の相手はしていなかった。
上次见到他还是两年前,当时小明才10岁,虽然帮着父亲打点家业,也只不过是干点杂事而已,还没法接待客人。
「ようやく門番に出世したか?」
”已经出息到能当守门人了“。
揶揄《やゆ》って頑丘は子供に手綱《たづや》を渡す。
顽丘一边揶揄,一边把缰绳递给小孩。
「じゃあ、門番殿にこいつをお任せしよう。──大切にな。絶対に他人を近寄らせるんじゃないぞ」
“呐,现在我把这个交给门神,——非常重要。绝对不允许其他人靠近”。
「分かってるって」
“知道了”。
やんちゃそうに笑って、子供は頑丘から手綱を受け取った。ほんの少しおっかなびっくりの様子で強面《こわもて》の騎獣《きじゅう》を見上げる。
调皮的对顽丘笑了笑,便从顽丘的手中拿过缰绳。有些畏惧的抬头看了看可怕的骑兽。
「前にもこんな騎獣だったっけ?」
“上次是这只骑兽吗?”。
「前のは死んだ。妖魔《ようま》にやられたんだ」
“上次的那只死了。被妖魔杀死了”。
子供は頑丘《がんきゅう》を振り仰いだ。
孩子抬头看看顽丘。
「襲われたの? おじさんはだいじょうぶ?」
“ 是被袭击的吗?叔叔你没受伤吧?”。
「ご覧の通り、なんとかな。──乾《けん》はどうだ。妖魔は出ないか」
“正如你看到的。马马虎虎,乾县怎么样?没出妖魔吧”。
「出るよ、たまにね」
“有啊,出现了几次”。